この記事は、大学ボカロ部 Advent Calendar 2021の8日目の記事です。
初めに
初音ミク「マジカルミライ」プログラムコンテストとは、「創作」をテーマにした企画イベントであるマジカルミライにて去年から新たにスタートしたプログラマ向けの創作コンテストです。
楽曲やイラストに、これまでにない要素であるプログラムを加えることで、新たな技術とクリエイターの掛け算を作り、創作活動をより盛り上がらせることを目的に開催されました。
今回、初音ミク「マジカルミライ 2021」プログラミング・コンテストへ筆者が初参加し、惜しくも入選を逃したものの来年こそは受賞を目指したいと思い
次回に向けてこれまでの応募作品と公式発表を分析し、現在の作品の種類と課題点、評価される項目や要素を個人的にまとめました。
コンテストの理解を深めたい人や、来年のコンテストに挑戦してみたいという方は
ぜひアイデア出し、作品の磨き上げ等にご活用ください。
コンテストの分析には以下の情報を活用しました。
コンテスト応募ページ
2020年度、2021年度
コンテスト応募者向けサポートページ
2020年度、2021年度
入選作品・受賞作品紹介動画
2020年度 入選作品 受賞作品
2021年度 入選作品 受賞作品
コンテスト応募者のGithubページ
その他関係者Twitter等
あらまし
作品の分類と課題点
応募作品の種別分けとそれぞれの特性
以下後日公開
選考に高評価の要素
入選・受賞紹介で語られたキーワードまとめ
求められる作品とは
結局どんな作品作ればいいのさ
作品の分類と課題点
入選・受賞作品紹介とコンテスト応募者向けサポートページから過去2回分の応募作品を体験し、
それぞれの特性や表現の違いから、作品を5つのパターンに分類しました。
その上で審査、投票、難易度、着想の観点からそれぞれを◎~△で評価し、課題点を考察しました。
評価の詳細は以下の通りです。
審査
審査基準を満たし、審査員の評価を得られやすいかであり、入選狙いを目指す際の指標です。
審査基準は以下の通り
クリエイティビティ:Webアプリケーションの演出が楽曲と同期して魅力的に見えるか
イノベーション:Webアプリケーションを支えるアイデアがユニークで、未来の創作文化を予感させるものであるか
完成度:Webアプリケーションが一般的なWebブラウザで正常に動作するか、実装が技術的に優れているか
投票
入選後に行われるユーザー投票においてどれだけ投票を集めやすいかであり、受賞を目指す指標です。
主に「エモさ」「集客」「話題性」「親しみ」などなど いわゆる一般ウケするか否かです。
難易度
完成がどれぐらい難しいかを示します。
完成までに必要な「時間」「タスク量」「技術内容」などから判断しています。
着想
過去作および他応募作品との違いを見出し、作りたい作品が思いつきやすいかを示します。
競合の少なさだけでなく、モチベーションの維持にも繋がる内容です。
なお、分類と評価は筆者の経験や審査・投票結果から推測した個人的な意見です。
人によって考えは異なるので、あくまで目安程度に捉えるようお願いします。
ミュージックビデオ型
審査:○ 投票:◎ 難易度:○ 着想:△
本コンテストで用いられるTextAlive APIで想定された運用であり、一番応募数の多い分野です。
単なる映像表現だけに収まらず、曲や世界観に対し没入感を深められることが最大の特徴です。
この評価はピンからキリまでを含めた平均であり、作品によって審査も難易度も大幅に変わります。
この中でさらに分類分けができますが、今後のコンテストでさらに細分化されることを考えたので、あえてひとまとめにしました。
もし分けるとすれば、
歌詞主体
Lyric Trail/catLee さん
LyricTyper/GunseiKPaseri さん
グリグリリック/Ryotaro Tsuda さん
審査:○ 投票:○ 難易度:◎ 着想:△
歌詞を主人公に捉える、リリックアプリとして正に正統派。
TextAliveのサンプルプログラムがあまりにも強力であるが、作成は最も単純なので機能拡張がしやすい。
世界観主体
Miku's Live/tokei39 さん
ポリリズみっく!/oki さん
審査:○ 投票:○ 難易度:◎ 着想:○
制作者が持つ独自の世界観や感性を楽曲に込めた作品。
TextAliveの楽曲解析結果と上手に調和することができれば完成度が高まる。
映像表現
打ち上げ花火/Zen さん
tile & box/hittaito さん
Infinite Cyber Tunnel/CalcRobot さん
審査:○ 投票:◎ 難易度:○ 着想:○
3Dや図形などにランダム性のある動きを加えることで、新たな視覚的表現を目指したもの。
楽曲情報を元に無限の展開を作ることができる。
物語性
キミを探す、夏/Ryotaro Tsuda さん
密かなるにじそうさく/倉重 みつき さん
音譜の行進隊/takanosuke さん
審査:◎ 投票:◎ 難易度:△ 着想:△
曲全体を通して展開があり、ストーリーを感じ取れる作品。
長所はただひたすらにエモい。短所は正解がなく制作が安定しないこと。センスが問われる。
等が考えられます。紹介した作品でも複合している場合が多く、完全な分類分けが難しいです。
逆に言うと、自由な発想でいくらでも可能性を描ける。まさにこのコンテストを象徴する分類だと思います。
シミュレーション型
歌って頂いた。/minatty さん
光粒子とコトバの海/Kaku さん
みくばん - Mikuban/Teardrop さん
審査:◎ 投票:○ 難易度:◎ 着想:○
操作パネルによってパラメータを変更することで、ユーザーが自分の好みにアプリの表現内容を変更できる作品群です。
MV型と似ていますが、この要素を加えるとユーザー向けからクリエイター向けに近くなり
機能要件も作品の方向性も大きく変わると考えて別分野にしました。
プログラム設計の段階でアプリのパラメータ変更を想定する必要があるもののアプリ開発の観点ではそこまで難しくないことに加え
審査員がクリエイターの目線を持っているので目指す価値は十分にあると考えています。
ただし、ユーザー投票においてはクリエイターは少数なので、他作品に遅れをとるかもしれません。
パラメータを直感で操作できる等、操作UIへの工夫がカギとなるでしょう。
ゲーム型
Lyric Shooting!!/すぱりだ さん,やつはし さん
Voice Shooter/sakuramodki さん,すぱりだ さん,ななしお さん,HiroyukiIsoe さん,ya2ha4 さん,りおんぬ さん
TouchLyricWorld/huskyB4ll さん
審査:◎ 投票:◎ 難易度:△ 着想:◎
TextAliveから得られる楽曲情報を元にゲームを構築した作品分類です。
特徴はユーザーからの入力を直接反映できるため、インタラクティブ性がMAXな点であり
プログラマなら一度は夢見るゲームプログラミングなだけあって着想もモチベーションも向上が見込めます。
しかし、この分野は「表現の違い」より「クオリティの差」が出やすいだけでなく
ユーザー向けのゲームデザインを注視すると実装要件が跳ね上がり難易度が相応に高いのが難点です。
イラストや効果音など、プログラム以外の分野が他より強く求められる傾向にあるので、入選を目指す際には注意が必要です。
でもやっぱゲーム作るのもやるのも楽しいので、ぜひ一度は挑戦してほしいところ。
プラットフォーム型
mmmapper/nolze さん
配置 de PV/upc1712 さん
審査:◎ 投票:△ 難易度:○ 着想:○
創作の実行環境を提供してユーザーのクリエイティブを引き出す効果を期待した作品で
シミュレータ型との違いは、あちらをMV調整が操作できる系とすると、こちらはMVそのものを作成できる系であり今流行りのメタ的な分野といえるでしょう。
想定するユーザーがさらにクリエイター向けとなり、一般ウケがより難しくなるので
どこまでをユーザーが設定でき、どこまでをシステムがサポートするのか
自由度と制約のバランスが最も重要になると入選発表時に分析されていました。
ミックスリアリティ型
審査:△ 投票:? 難易度:△ 着想:○
画面という枠を超え、端末のカメラやAR、その他周辺機器を活用した作品です。
いまだ入選作品がないものの、2020年度ではARマーカーを使用したものや学研で過去に販売されたポケットミクの活用、
2021年度では入選発表にてエキストラ紹介された きさまさんのSan-Juke Box等、影で力を蓄えている存在でもあります。
入賞作品がない最大の理由は、実行環境の依存率。
最新技術が含まれる分、ブラウザや端末が対応していないことが多くユーザーへの普及と体験が難しいため入選が厳しい状況にあります。
主催運営によって実行環境がある程度規定されたら盛り上がるかも?今後に期待です。
今後の展開
第1回から2回にかけて、TextAliveの機能把握やコンテストの恒常化が見込まれたこと等により
クオリティが一気に跳ね上がった印象を筆者は持ちました。
恐らく、今後上記の種別を複合させたような作品が登場したり、目指されることが考えられます。
というか、すでに制作されています。倉重 みつきさんの密やかなるにじそうさくはまさに
MV(物語性)型にゲーム型を掛け合わせた凄まじい作品です。
ただ、必ずしもプラス思考がいい結果を産むとは限りません。機能を足すということは技術的に難しくなるだけでなく、タスクが複雑になり完成が遠のくことになります。
プログラムに限らず、やりすぎはよくありません。この種類分けが自身の力量と合致した作品作りの参考となることを願っています。
また、クリエイターは新しい表現を常に心掛けているので、この分類に収まらない全く新しい概念も今後誕生することでしょう。
コンテストである以上、「評価される作品」が目標となるのは仕方のないことですが、
入選なんか考えず、のびのびと発想を伸ばして自分だけの作品を作るのは全くもってありよりのはべりです。
独自性や競合を守るため、あえて私の独白や予想は追記しません。あとは皆が勝手にどうぞ。
アドベントカレンダーに間に合ってないのと、思った以上に文量が多く難産だったので
後半はまた後日執筆します。
完成してからまた上げ直します。トリアエズ イマハ ネサセテ
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